『米国特許権利化への道:First Office Actionへの対応について』
先日、シアトルで受講した米国特許実務セミナーで学んだポイントについて一部ご紹介します。米国特許戦略における視点、特に、First Office Action(OA)が、迅速な権利化の鍵を握るという点について解説します。
●審査官との「協調戦略」
講師が一貫して述べていたのは、「審査官とのやり取りは主張のぶつけ合いではなく協調であるべき」という原則です。特許権利化において、審査官との間でWin-Loseの関係となることを避け、互いにWin-Winとなる戦略をとることが重要となります。
●審査官を「知る」
First OAへの対応は、まず相手(審査官)を理解することから始まります。セミナーでは、US代理人は、OAを受け取ったらまず審査官の名前と経験レベル(Junior examinerかPrimary examinerか)を確認しているとのことでした。この情報は、対応戦略を決定する上で重要です。
審査官の経験レベルによる対応戦略の違い:
・Junior examiner:経験が浅く、上司(Supervisor examiner)の影響が強く、裁量が小さい傾向にあります。対応では、論理構築を丁寧に行い、面接では上司も納得させる明確な説明を重視します。
・Primary examiner:経験豊富で裁量が広い。柔軟な交渉が可能であり、協力して「合意形成」を目指す対応が効果的です。
●コメントから読み解く審査官の「真意」
カバーページで形式的な情報を確認しつつ、審査官の情報を把握したら、次に行うのがOAの詳細なコメントの精読です。ここに、審査官の論理や、特許性に関する懸念の核心が隠されています。引用文献の適用が適切か、IDS(情報開示義務)の未考慮など、形式的な不備を見逃さない注意深さも重要です。この丁寧な読み込みが、後の効果的な反論や補正の土台となります。
●面接は「チームミーティング」
対応戦略の中でも、特許取得を加速させる面接による協議は特に重要なツールです。面接は審査官と出願人が「同じチーム」に立ち、発明の真の価値と重要性を直接伝える機会となります。面接では、審査官と出願人(代理人)との間でallowableなクレームを定義するというゴールを共有し、「合意形成」することを目的とします。柔軟な姿勢で臨み、互いに納得できる落としどころを共同で見つけることが、迅速な権利化に繋がる鍵となります。
●まとめ
First OAの対応は、単なる「拒絶への反論」ではなく、審査官との信頼関係を築き、論理と柔軟性を兼ね備えた戦略を駆使するプロセスです。これらのアプローチは、皆様が日頃から意識して実践されていることでしょう。しかし、米国特許実務においては、この「審査官との協調」という原則を今一度深く認識することが、迅速な権利化に繋がる重要な鍵となり、米国特許取得への着実な近道となるでしょう。