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AI時代の特許翻訳 ~ 所内コミュニケーションが生む「高品質」~

翻訳室  永野 利道

[生成AIを活用した特許翻訳の現状]
 近年、生成AI・機械翻訳の性能は飛躍的に向上し、かつて頻発していた主語の欠落、時制の不一致といった非文は大幅に減少しています。その結果、翻訳業務は効率化が進み、翻訳者に残る作業はプレエディット(事前編集)とポストエディット(事後編集)に集約されつつあります。これらの処理も自動化が進んでいますが、現時点では生成AIだけで「権利主張や訴訟に耐えうる品質」を完全に担保することは難しく、最終的には翻訳者による確認と弁理士による判断が不可欠です。

 

[生成AIにできないこと]
 プレエディット/ポストエディット処理での重要事項は、修飾関係、対応関係、単複等について多義的に解釈可能な文章を事前または事後に検出すること、そして検出した不備を適切に修正することの2点です。前者は生成AIがある程度可能ですが、すべて検出できているかは翻訳者が確認する必要があります。後者は、発明内容や技術的背景、特許制度上の意図を踏まえた判断を要するため、弁理士の関与が不可欠です。特に請求項の構造や各請求項の意図を正確に翻訳に反映するためには、言語ごとの表現特性を考慮した多面的な判断が求められ、生成AIへ一任することはできません。

 

[当所における翻訳者と弁理士の協力体制]
 当所では、翻訳者は弁理士にインタビューを行い、発明の背景や本質を理解した上で、翻訳時に明確化すべき点を踏まえ翻訳方針を決定します。最終的な特許戦略や権利範囲に関する判断は弁理士が行いますが、言語処理を専門とする翻訳者は、その方針に照らして生成AIがプレエディット/ポストエディット処理した結果の見直しを行い、翻訳の品質について最終的な責任を負うことになります。

 

[結論]

 当所は翻訳者と弁理士が緊密に連携する体制により、日英・英日・日中・中日翻訳で生成AIを効果的に活用しつつ、高い品質を維持しています。翻訳についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください

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